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必見!オーストラリアサッカー協会の推奨する指導法
以前に戦略(サッカー哲学)についてのコラムの中で、サッカー哲学は指導者に必要なものだという話をさせていただきましたが、もう一つ指導者が持つべきものがあります。
それは、
「トレーニング哲学」です。
「トレーニング哲学」というのは、練習に対する考え方であり、その考えを表現するために必要なのが
「指導法」です。
指導法というのは指導者により様々であり、誰もがベストな指導法を探し、試行錯誤を繰り返していると思います。
そこで今回は、オーストラリアサッカー協会コーチングコースで学んだ「指導法」について紹介したいと思います。
オーストラリアサッカー協会では、練習の構成要素として以下の4つを挙げています。
・プラン(Plan)
・準備(Prepare)
・指導(Conduct)
・評価(Evaluate)
現在のチームの問題点などを洗い出し、その改善策を落とし込むための練習メニューを練る「プラン」、
練習メニューをこなすための道具や場所などの「準備」。
実際に練習メニューをこなす「指導」。
そして、自分の行った練習を振り返り、次の練習に繋げる「評価」。
というのが、指導者から見た練習の一連の流れになります。
このシェアトレで主に紹介しているのはトレーニング方法であり、「プラン」の段階で非常に役立つものです。
しかし、せっかくいい「プラン」を立てたとしても、他の要素に問題があるといい練習にはなりません。
特に「指導(Conduct)」の部分の占める割合というのが非常に大きなものになります。
どのように指導するのか、それこそが「指導法」です。
そして、指導法を考えるにあたり、「指導」のパートをさらに3つに分けることができます。
・導入 (Foundation)
・実践 (Animation)
・まとめ(Conclusion)
「導入」というのは、その練習での指導を効果的にするための準備段階です。
そのために必要なのが「フレーミング」。
練習を始める前に、「現在チームにどういった問題があるのか」、そして「なぜこの練習をするのか」を選手に伝えます。そうすることで選手は練習の背景を理解することができ、練習に対する理解力が高まります。
そのときに重要になるのは、「聴覚」と「視覚」の2点から選手に働きかけることです。簡単に言えば、言葉だけの説明ではなく、ホワイトボードなどを使用して見て理解できるようにするということです。
ある選手は言葉で理解し、ある選手は見て覚えるといったように、選手によって理解しやすい方法は異なります。ここで注意しなければいけないのは、あくまで詳細は「実践」パートで行うので、簡潔に説明することが重要です。
そして、「フレーミング」が終わったら、今度は身体的・技術的な準備をするための「ウォームアップ」が必要です。
ウォームアップは、身体的・技術的な準備がテーマであるため、「指導」をする場ではありません。オーストラリアサッカー協会では、ウォームアップ中は「coaching(教える)」ではなく、「influencing(影響を与える)」時間だとしています。
「影響を与える」というのは、プレーを止めることなく「パススピードをあげよう」、「顔をあげよう」といった声掛けをすることにより、技術的な向上を促すことを指します。
そして、身体的・技術的にも「ウォームアップ」が完了したら、「実践」に移り、その練習で解決すべき問題部分の改善に着手します。
あとは事前に決めた練習メニューをこなしながら指導を行うのですが、コーチングコースで特に口を酸っぱくして言われたのが、「指導を始める前にチェックリストを確認する」ということです。
チェックリストとは、
Start ルールを説明したら、素早く開始させる
Organisation ピッチサイズは適切か?マーカーなどは見やすいか?
Attitude 選手は集中しているか?
Ability 選手のレベルに対して練習の設定は適切か?
Understanding ルールを理解しているか?
Shape 選手のポジションは実践に近い形か?
Self コーチ自身で練習のテーマ・ポイントなどをもう一度確認する
以上の確認が終わって、初めて選手に指導を開始します。
その際の指導法として「停止法(freezing)」が推奨されています。
停止法とは、事前に立てたプランどおりのミスが発生した際に、プレーを止め、選手に問題点と解決策を伝える方法です。
この停止法のポイントは、
ミスが発生した時に止める
視覚・聴覚・身体で学ばせる
説明が終わったら、必ず同じ状況でプレーを再開させる
止める回数・説明時間を最小限に留める
つい、ミスが発生する前に選手に説明したくなってしまうのですが、ミスをした際に指導をしないと選手は効率よく学ぶことができません。
また、説明をする際は言葉で説明しつつ、実際に選手やボールを動かして、視覚および身体で理解させることが重要です。
そして、説明を終えたらボールと選手をそのミスが発生する前の状況に戻し、もう一度プレーをやり直させて、そこからプレーを再開させます。
最後に、これが一番難しいのですが、停止している時間をなるべく短くすることです。そのためには、全てのミスで止めるのではなく、優先順位の高いミスを判断し、優先順位の低いものは無視をする必要があります。また、説明時間を短くするためには「プラン」の段階で、どうやって説明するのかの台本を用意することもポイントです。
最後に大事なことは練習の成果を確認することです。
そのためには最後までコーチングし続けるのではなく、選手のプレーを見守る時間が必要です。その間に同じミスが繰り返されても指導するのではなく、見守り、次の練習の「プラン」に役立てます。
そして、その日の練習の最後には必ず選手を集めて、その日の練習のテーマ・課題・解決策をもう一度振り返ることも重要です。
以上が、オーストラリアサッカー協会の推奨する指導法の概要となります。
おそらく、日本サッカー協会でも同じような内容だとは思うのですが、参考にしていただけると嬉しいです。
執筆者
大野元春
1987年生まれ、千葉県八街市出身。イングランドでコーチングライセンスを取得した後、現在はオーストラリアのナショナルプレミアリーグのMonaro Panthers FCでU18の監督を務める。オーストラリアサッカー協会Bライセンス取得中。http://blog.mottofoot.com
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