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戦術理論
【サッカー戦術編】サッカーにおける戦術の基本解説
サッカーロシアW杯本大会出場を決めた日本代表。
最近では「ポゼッション」「デュエル」「バイタルエリア」など初心者には聞きなれない解説の言葉がいくつか聞かれますが、「これって何?」「日本代表はどんな戦術で戦っているの?」と疑問を感じたことはありませんか?
私もその昔はわかりませんでした。
そこでここでは様々なサッカー戦術を例にあげ、日本代表の戦術を解説したいと思います。
これさえわかれば、ロシアW杯をもっと楽しめる事、間違いなしです!
よく「サッカー戦術っていうのは・・・」という話になると、まず頭に浮かぶのが「フォーメーション」という人が多いかと思います。
実際わたしが聞いてもほとんどの人が「3-4-3」「4-4-2」というフォーメーションの話になります。
サッカーにおいて、戦術は無数に存在し、その考え方も様々です。
その昔は攻撃と守備に完全に分かれるという考え方が主流でしたが、現代ではフォワードからセンターバックまでスペースをなるべく無くしてコンパクトに保ち、全員攻撃・全員守備を展開する戦術、トータルフットボールが主流になってきています。
このトータルフットボールを基本としつつ、その中でどのようにボールを奪い、どのような攻撃を展開するかといった議論になっていきます。
これらは基本的に、チームに所属する選手の特徴を生かせるにはどの戦術を用いるべきか、又はチーム方針として「このような戦術をしたい」という基本路線があり、そのための選手を発掘するところからスタートすると考えられています。
それでは簡単にわかりやすく解説していきましょう。
サッカー戦術を基本的に大まかに分けると「ボゼッションサッカー」「リアクションサッカー」ということになります。
ポゼッションサッカーとは?
簡単に言うと、ボール支配率を高くし、確実なパスワークで相手を崩すサッカーを言います。
当たり前のようですが、これを実行するには高い技術力が必要になります。
ポゼッションサッカーを戦術として用いているのがバルセロナ、バイエルンで、代表チームではスペインが有名です。
発祥とされるバルセロナのメッシ・イニエスタ・スアレスなど非常に技術力の高い選手たちのショートパスで繋ぐサッカーは圧巻ですよね。
リアクションサッカーとは?
カウンターサッカーで、堅守速攻型を意味します。
リアクションサッカーを戦術として用いているのが、レアル・マドリードやセレッソ大阪です。
カミゼーロやベンゼマがボールを奪取し、前線のCロナウドへ素早く繋ぐカウンターは相手チームにとっても脅威ですよね。
これらポゼッションサッカー、リアクションサッカーは最初からどちらかに絞るのではなく、現にチームに所属する選手の能力によって決められるのが基本です。
次にサッカー戦術としてのフォーメーションを見ていきましょう。
フォーメーションはその時代によって流行がありますが、基本的には
4-3-3
4-4-2
3-5-2
4-2-3-1
などがあげられます。
ではそれぞれの特徴を解説しましょう。
4-3-3
この戦術は両サイドにウイングを置き、サイド攻撃が可能になります。
前線が高い位置からプレスディフェンスを試み、早い段階でボールを奪うことができます。
デメリットとして、前線の3枚があまり高い位置でプレーすると中盤が薄くなり、相手に簡単にポゼッションされる危険性があります。
4-4-2
最もオーソドックスな戦術で、攻守ともにバランスのよいフォーメーションです。
ブラジル代表もよく採用しているシステムで、フォワードが高い技術力を要する場合は中盤が厚くなり有効な戦術になります。
中盤の4人はサイド攻撃を仕掛けやすい横並び型、ボランチを2枚置く四角形型、1ボランチでサイドと1オフェンシブミッドフィルダーを置く攻撃重視のダイヤモンド型とバリエーションも複数あります。
3-5-2
中盤に5人を置くことからポゼッションサッカーを行うには有効なフォーメーションと言えます。
また、サイド攻撃が得意なドリブラーがいると、中盤が厚いためクロスを上げればかなり得点の匂いがしてきます。
しかしディフェンスが3枚と少ないので、ディフェンス能力に優れた選手が必要となるフォーメーションと言えますよね。
フィジカルで勝てない分、スピードとパスワークでカバーしようとしている今の日本代表ですが、3-5-2のように中盤を厚くしてテクニックで挑むことも重要に感じます。
4-2-3-1
近年、注目を浴び始めた戦術の一つで、縦に長いフォーメーションのため、流動的に機能します。
1トップのフォワードに大迫有也のようにキープ力があり、有能なポストプレーヤーがいれば、2列目からの飛び出しからの得点チャンスが期待できます。
また、中盤の2-3が厚くなっているので、ポゼッションサッカーも有効です。
では強豪国のサッカー戦術はどのようなものなのでしょうか?
ブラジル
言わずと知れた南米の強豪国ブラジルは心技体どれをとっても超一流です。
個人技が素晴らしいので迷わずポゼッションサッカーかと思えばそうではありません。
2010年W杯時の監督であったドゥンガは現役時代ボランチでキャプテンマークを巻いていましたが、監督としても堅守速攻のチームを作り上げました。
現在はポゼッションサッカーで4-3-3や4-4-2というフォーメーションです。
アタッカーは若き天才と呼ばれる注目選手のガブリエウ・ジェズスが勤め、アンカーにはカゼミロが控えて前線にパスを供給します。
左サイドはマルセロ、ネイマールが控えており、サイドから中央を崩しにかかります。
同じく南米の強豪国で、メッシを主体とし、イグアイン、アグエロ、ディマリアといった個人技重視のポゼッションサッカーを展開しています。
フォーメーションも3-4-2-1などの攻撃的布陣が主体で、高い位置から強烈なプレスを仕掛けて人数をかけてゴールを奪いにいきます。
イタリア代表はリアクションサッカーの代名詞ともいわれ、堅い守備からのカウンターを得意とします。そしていつしか「カテナチオ」と呼ばれるようになりました。
しかし近年ではただ引いてボールを奪うわけではなく、高い位置で相手のビルドアップからのポゼッションサッカーを封じ込めてカウンターを仕掛ける戦術に変わりました。
つまり、一昔前の攻撃と守備が完全に分断された戦術ではなく、フォワードも守備をすることが求められてきたということです。
ここからも現代サッカーがトータルフットボールに変化してきたことが裏付けされていますよね。
スペイン代表はポゼッションサッカーを主体としていましたが、最近ではリアクションサッカーを織り交ぜた戦術で、通称「無敵艦隊」と呼ばれています。
相手に応じて4-3-3、3-4-3とフォーメーションを使い分け、ボランチにはセツジ・ブスケツ、両サイドにはチアゴ・アルカンタラ、イニエスタ、前線には左からペドロ・ロドリゲス、モラタ、イスコと最強布陣を敷いています。
ではわが日本代表の戦術はどうなのでしょうか?
現日本代表監督はボスニア・ヘルツェゴビナ出身のハリルホジッチ監督です。
ハリルホジッチ監督はフォワードにもディフェンス能力を求めるので、トータルフットボールであることがわかります。
そしてポゼッションサッカー、リアクションサッカーを織り交ぜた戦術で、相手に応じて戦術を変えていくスタイルを確立しようとしています。
つまり、ハリルホジッチは、今までのトルシエのような「フラット3」や「ポゼッションサッカー」など、理想とするサッカー戦術スタイルを追求するのではなく、シンプルに勝つサッカーを追求するということなんだと思います。
現代のトータルフットボールは全員攻撃、全員守備をテーマにあげていますが、その基本になるのはやはりパスサッカーです。
その影響がジュニア年代の育成現場でも顕著であり、トータルフットボールとはパスサッカーであると結論付け、ドリブルよりもパスを推奨するケースが多く見られます。
フィジカルで劣る部分をパスで補ってきて行き詰っている現状を見る限り、ドリブルテクニックやスピードで補うことで、世界上位に食い込めるのではないか?と言う戦術家がいるのもまた事実です。
そのような意味では、あくまでドリブル技術を重視し、あえて狭いスペースで勝負をすることに拘る宮城県の聖和学園サッカー部は貴重な存在かもしれませんね。
サッカー戦術は生き物であり、日々その姿を変えつつあります。
確かにポゼッション率が相手に対して8対2で勝つことがあれば、一瞬の隙をつかれてカウンターで負けることもあります。それを考えれば、ポゼッションサッカーが必ずしも優位だとは言えないわけですよね。
ただし、勝つサッカーを理想とし、相手によって戦術を変えるスタイルを追求するには、選手の適応能力・個人技術能力が必要なため、代表選考の段階で苦労するかもしれません。
そのため、ハリルホジッチ監督は、いくら実績のある海外選手であろうとも、調子を落としている選手や、リザーブに甘んじている選手は躊躇なく代表選出を見送っていますよね。
W杯では対戦相手によってハリルホジッチ監督がどんな戦術を用いるのかが今から楽しみですよね。
サッカーにおける戦術とは、チームがどのような方針を持っているのか、又はチームの所属選手はどのような選手で、それらの選手を生かすにはどのような戦術を用いるべきなのかによって決まります。
その戦術は、現在でいわれるショートパスをつないでゆっくりビルドアップし、ボールを支配し続けるポゼッションサッカーなのか、または守備を固めてとにかく失点を防ぎ、ボールを奪取したらすかさずカウンターを仕掛けるリアクションサッカーなのか、それらに対応するフォーメーションは何を採用するのかと様々です。
このようにサッカー戦術を考えると、また違ったロシアW杯の楽しみ方ができるのではないでしょうか?
最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆者
シェアトレ運営部
シェアトレを運営している筑波大学のメンバーです。日々指導者のために勉強中です
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