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戦術理論
【Q&A 筑波大学蹴球部監督に聞く】選手の個性の磨き方
天皇杯での三連続Jチーム撃破のジャイアントキリングという偉業も果たし、旋風を巻き起こした筑波大学蹴球部を指揮する小井土正亮監督。
そんな小井土監督にサイト内で募集した日頃の指導の悩みについて答えていただくQ&A形式のコラムの第1弾では、「選手との向き合い方」について答えていただきました。
【前回の記事はコチラ!】
https://www.sharetr-soccer.com/articles/view/31
今回の第2弾では、選手の個性の磨き方について答えていただきました。
<お父さんコーチからの質問>
茨城で少年団を指導している者です。
私のチームにはドリブルが得意な選手、ディフェンスが得意な選手と個性がある選手が多いです。
その子たちのためにも個性を磨くような指導をしたいと考えています。
それぞれの特性をより伸ばすような練習を用意したほうがいいでしょうか?それとも育成段階では短所を修正するほうがいいでしょうか?
(担当学年 高学年)
<小井土監督の答え>
これも個人的な見解になるのですが、私はサッカーにおいて一つのプレーだけに特化した練習はしないほうがいいと思っています。
ドリブルだけだとかそういう何かに特化して練習をし、成功した例が取り上げられたりしますが、私の経験上それはレアケースだと思います。
相手があってゴールがあってゴールのネットを揺らす、というのがサッカーというスポーツなので、そのために何をしなくてはいけないの?というところが大切になってくると思います。
それは大人だろうと子どもだろうと変わらないと思います。
ドリブルで抜くという練習をしても、何のためにドリブルするのか。
足が速いといっても、なぜ足が速い必要があるのかわかっていない選手はどこかで行き詰まります。
それなら早い段階でサッカーってどんなスポーツなのかと気づかせてあげる必要があると思います。
守備だったら点を取られないし、相手からボールを奪う。そのためにはどうすればよいのか選手に考えさせる。
攻撃だったらボールを奪われないで、相手のゴールにボールを入れる。
そのためにはどうすればよいのか選手に考えさせるというように、当たり前のことを投げかけ続けてあげた方がずっと伸びると思います。
ただし、年齢によっては言葉だけではできないので、育成年代からサッカーというのはこういうものだと頭だけではなく、体感させる必要があります。
ただ、やはり頭で理解できない選手はボールを取られても追わなかったり、自分の好きなことだけやってしまったりと、全体がわかってない中でプレーしている選手が多いように感じます。
そもそも大前提としてサッカーというスポーツの構造、ルールを知らなければいけないと思います。
それによって、どういうメンタリティー、技術、特性が必要なのかといったことが変わってくるからです。
また、戦術の理解も重要です。戦術というのは、4-2-3-1といったフォーメーションやポゼッションサッカーといったスタイルの話ではなく、「ボールを取られない」「前が空いていたら前に運ぶ」「隙があれば相手のボールを取る」 「背後に走られないポジションからインターセプトを狙う」などのもっとベーシックな個人戦術に当たるようなもののことです。
個人の技術、個人が持つフィジカル的な特性というのはサッカーにおいて実行すべきプレー(=個人戦術)にのっとっていないといけないわけですので、個人戦術を学ばないことには、せっかく持っている良い個性も発揮できないのではないか思います。
例えば、いくら速く走ってもオフサイドポジションに走ってしまったり、いくらドリブル上手くても自分たちのペナルティーエリアの中でのドリブル始めてしまったりしたら意味がないですよね?
明らかにドリブルを選択すべきでない状況にも関わらず、ドリブル始める選手に対して「ナイスプレー」とか「カッコイイね」と言ってしまう場面を見かけると、将来この選手が正しいサッカー観を持つことができるのか、心配になってしまいます。
選手の個性を磨くためには指導者がサッカーの本質を知り、選手を注意深く観察することが大切です。
例えば、ドリブルが上手いように見えても、大きくボールをつついてドリブルをしていて、ただ足の速さで相手を振り切っているだけかもしれません。
また、思った通りにボールをコントロールできていなかったり、相手をかわせているようでもその先のことが見えていないから同じ選手に戻られてしまったりなどした場合、それをドリブルが上手いというのかと言えるでしょうか?
なんとなく「ドリブルが上手い」というようなアバウトな評価ではなく、より細かく技術、判断の部分を評価しなければいけません。
例えば、足のインサイドとアウトサイドを自在に使ってドリブルはできるが、相手との兼ね合いでその技術を発揮できていない、または、奪われないドリブルはできるが、突破のドリブルはできない、などより細かく「ドリブル」というものを評価する必要があるのです。
ドリブル以外でも同じです。
シュートがうまいと言っても、それはただ右足のインステップシュートがうまいだけで、もしかしたら左足は全く蹴れないかもしれません。
ヘディングができないかもしれません。
このように細分化してみるということがとても大切だと思います。
すごくよい個性だと思っていたけど、それはすごく限られた個性かもしれません。
それでは限られた場所でしか強みを発揮できない選手になってしまいます。
ネガティブな面を見つけて指摘するということではなくて、サッカーをうまくプレーするために、その個性は本当にその選手の個性といえるのか、見極めて正しく本人に理解させることが大切なのです。
君はドリブル上手いぞと褒められて育った選手が、タッチの大きなドリブルのみで満足していて、周りのレベルが追いついてきたときに、「あれ?全然ドリブルで相手抜けないや・・」という状況におちいってしまう。
それは明らかに指導者の責任だと思います。
そうなる前に発揮されたプレーを分析し、出来ている部分は褒めつつも、改善の余地がある部分を気づかせてあげることが必要だと思います。
例えば、もしその選手がドリブルが得意だと思っているなら、「縦に速いドリブル上手いよね。
じゅあさらに、相手を惑わせるようなキュッと止まれるドリブルできたらもっといいよね。次の試合でやってみたら。」というように、少し高い基準で具体的に改善点を伝えてあげることが大切です。
認めて褒めてあげ続けるのも個性の伸ばし方ですが、同時に選手のその先を見据えて、少し難しい課題を与え続けるのも重要な個性の伸ばし方です。自分の個性だと思っていたものが通用しない状況になったときが一番つらい思いをするのは選手です。
それは指導者の責任であると思うので、指導者が選手の個性を注意深く観察してあげる必要があると思います。
以上が私の考える個性の伸ばし方です。
・まずは個性に特化した練習だけをするのではなくサッカーの本質を理解させることが大切
・そのためには指導者自身がサッカーというスポーツを理解していなければいけない
・個性をアバウトに捉えるのではなく細分化し、どの状況のプレーは強みだがこうなると弱い、と自分の個性を正しく理解させてあげることも指導者の役目
・その上で少し高い基準の改善点を示してあげることが必要
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引き続き小井土監督にご質問のある指導者を募集します!
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指導しているチームの年代と質問内容を記入の上、送信してください。
執筆者
シェアトレ運営部
シェアトレを運営している筑波大学のメンバーです。日々指導者のために勉強中です
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