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戦術理論
サッカー戦術の真の理解とは。新たに戦術を創造することは可能か
日本人は特に戦術論が好きだと言われます。
その戦術を支えるものやチームの文化よりも、「4-4-2システムはこうだ」とか、「あの監督はゾーンディフェンスを好む」など、とにかく話題や紙面のネタに事欠かないと思います。
では、このサッカーの戦術はどのように生み出されるのでしょうか?
それを知っているか、どうかで、サッカーの戦術に対する見方も大きく変わってきます。
また、指導者は知っておかなければならない必須ポイントになります。それもかなり大きなポイントです。
これを読めば、あなたにも新しい戦術を創造することができるかも知れません。
サッカーの戦術とは、文字通りサッカーのゲームにおいて戦う術です。
言うまでもなく、勝つための術です。
これはどのように創造されていくのでしょうか。
大前提は『サッカーの本質』を理解することです。
では、『サッカーの本質』とは何でしょうか。
それは『相手よりも多く得点を奪うこと』です。
「そんなことは分かりきっている」という意見が聞こえてきそうですが、そんな当たり前の事ほど普段、意識されていないものです。
現代サッカーのトレンドを、表面上だけ追いかけ、真似することで必死になり、このサッカーの本質を追求できない指導者、観戦者がなんと多いことでしょうか。
だから、戦術のトレンドが、すでにスタンダードになっていることに気が付かない人が多いのです。
先日、プレミアリーグのマンチェスターシティが1試合でのパス成功本数の記録を更新しましたが、何本パスを回しても得点にはなりません。
また、どれだけ相手よりも多い走行距離を記録しても、それで勝ち点を得ることはできません。
シュートが打てる場面でボールを失わないことを選択しているにも関わらず、ポゼッションしていることにフォーカスして誉めている。
そんな指導者、保護者、観客が本当に本質を理解していると言えるでしょうか。
少し掘り下げて考えてきましょう。
本質がサッカーのルール、競技特性(例えば、足でボールを扱う等)を考えた時に、攻撃と守備にそれぞれ2つずつ目的があります。
攻撃はゴールを奪うこと、ボールを失わないことです。
そして、守備はゴールを守ること、ボールを奪うことになります。
全ての戦術のスタートは、この本質を理解し、攻守の目的を頭に叩き込むことです。
戦術を整理する時、または相手や自分達のチームの戦術を分析する時に、知っておくと便利な見方が2つあります。
(もちろん2つだけではありませんが、ここでは割愛します。)
1つは局面の整理です。
サッカーには4つの局面があり、攻撃(自分たちのチームがボールを保持している時)、守備(相手チームがボールを保持している時)、攻撃から守備への切替(相手にボールを奪われた時)、守備から攻撃への切替(相手のボールを奪った時)の4つです。
別の言い方をすると、自分たちがボールを保持している時(ポゼッション)、相手がボールを保持している時(守備ブロックの形成)、相手にボールを奪われた時(ゲーゲンプレス=カウンタープレス)、相手のボールを奪った時(カウンターアタック)です。
よく聞かれる言葉も、この局面を表しているにすぎません。
もう1つは、場所の意識です。
例えば、ボールを奪ったのは、フィールドのどのエリアなのか、ボールを保持しているのは、どこのエリアでできているのか。
同じプレーをゴール前でもやるのか、などを意識して観ると深い分析につながっていきます。
これら局面とエリアを意識することで、そのチームが何をしたいのか、いつどこでどうやってしたいのか、が見えてきます。
その観えてくるものが、つまり、戦術です。
本質を理解して、分析を行った時に、それが本当にそのチームの戦術かどうかを確認する方法があります。
あるいは、指導者が戦術をきちんと自チームの選手たちに落とし込むことができたかを確認しなくてはいけません。
それは、分析から観えてきた戦術が何度も現象として表れているかどうかを確認することです。
そして、それが偶発的なものではなく選手たちの意図的な戦術行動によって、表れているかどうかを観てみましょう。
再現性があるようなら、それは狙ったプレーです。
サッカーは相手のいるスポーツなので、その再現性のあるプレーがその日のゲーム戦術であったかどうかは見えてきませんが、少なくとも意図的に再現されているのであれば、それは戦術です。
低年齢の育成年代や、何年かに一度の偶発的な珍プレーが好結果を招くことはあるとしても、トップカテゴリーで行き当たりばったりのプレーは通用しません。
それでは、新しく戦術を作ることは可能でしょうか。
答えは可能です。
ですが、例え1つ1つが閃き溢れるプレーだとしても、再現性のないプレーの集合体や選手個々の身勝手なアイデアでは、いずれ崩壊します。
現代サッカーでの戦術家と言えば、ペップ・グアルディオラやモウリーニョ、クロップなどが挙げられますが、彼らとてサッカーの本質を理解し、目的を達成するための原理原則を理解した上で、オリジナリティのある戦術を創造しているはずです。
つまりは、基礎・土台がないと、あるいは分かっていないと、クリエイティブなだけの戦術は通用しないことを分かっているのです。
グアルディオラは、自分たちがボールを保持している時(4つの局面の1つ)には、自陣のエリア(場所の意識)で、ボールを失わずに(本質・目的)、クリーンなボールを中盤に入れ、前線へとつなげていくことを戦術としています。
つまり、それがチームでやりたいことです。
そのために、CBの間にMFが下りてきて、相手の2トップに対して、3枚で数的優位を作り、プレッシャーのかからない良い状態で前にパスを入れる、という方法を取っていました。
本質を抑え、その上でやりたいこと、戦術を落とし込みますが、土台の基礎がしっかりと理解されていれば、その戦術はどんなにオリジナリティに溢れるものでも機能するでしょう。
もちろん、絶対という戦術がない以上、どんな戦術にもリスクは存在しますが。
能の世界に守破離というものがありますが、型破りと言うのは、型を知っているからこそできることですね。
いきなり新な戦術は無理でも、まずはコピーから入り、アレンジして、少しずつ自身のオリジナルな戦術にしていってください。
1 戦術とは?そもそも論=本質を理解しましょう
2 分析のアドバイス=局面と場所の意識をしましょう
3 本当に戦術かどうかの確認=意図的な戦術行動を再現しているのか。
4 戦術の創造=守破離は大切。
以上を観てきましたが、最後は、自分がその戦術が好きかどうかです。
サッカーは本質や目的を理解したからといって、理屈だけでは必ずしも勝利にはつながりません。
正解はたくさんあっても、そこに至るルートは無数にあるのです。
もちろん、途中で失敗と分かる時もあるでしょう。
であれば、自分の信じる道を行くのが良いというものです。
戦術とは勝利のための術ですが、サッカーは勝利だけが全てではないのですから。
執筆者
シェアトレ運営部
シェアトレを運営している筑波大学のメンバーです。日々指導者のために勉強中です
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