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技術理論
サッカー低学年のうちに必要な将来のための基礎練習
全日本少年サッカー大会の予選も終わり、各地区代表が出そろい、いよいよ本戦が始まる季節になってきました。
そこに出場できる選手は一握りであり、どのような練習をすればその一握りに入れるのかとても興味がありますよね。
誰しも最初から上手な選手はいるはずはなく、スタートは皆一緒です。
選手達にとっては、サッカーを始める最初に出会う指導者は、本当に今後を左右するといっても過言ではない存在と言えます。
そこで今回は低学年のうちに必要な将来のための基礎練習をご紹介していきたいと思います。
よく「サッカーは早くに始めないと手遅れになる」というような趣旨の話を耳にします。確かに早くからボールタッチを行えばそれだけ同じ年代の選手とは差ができるかもしれませんが、それは今だけです。
実はボールに触れるのも大切ですが、サッカー以外のアスレチックや鬼ごっこや縄跳びなど、様々な外遊びをすることこそが最も重要と言えます。
これからサッカー競技を行うにあたり土台となるアジリティ、神経系の発達はそれらの遊びを通して培われ、それはゴールデンエイジと呼ばれる年代でほぼ100%近く完成されると言われています。
ゴールデンエイジと呼ばれる年代は3歳~14歳の年代をさすと言われることがありますが、更に細かく分類すると、
プレゴールデンエイジ 3~ 8歳
ゴールデンエイジ 9~11歳
ポストゴールデンエイジ 12~14歳
というようになります。
小学校低学年などの育成年代では体を動かす様々な経験をすることで、基本的な運動動作を体で覚える大切な時期です。
この年代の選手は、まず、個の能力を引き上げることが重要です。
サッカーは個人競技ではありませんが、この年代に戦術理論を話したり、パスをさせようとしても全く理解できませんし、そもそも聞いていません。
戦術やパスなどは学年が上がれば必ず必要になりますが、それらをこなしていくにも、この年代で土台となるアジリティ・神経系を鍛えておく必要があり、つまり準備期間という言い方ができると思います。
少なくとも、選手のこれからの長いサッカー人生において、その土台作りを任されているという認識は指導者として最低限忘れてはいけないことだと思います。
結果を早く求めたくなりがちですが、まずはサッカーの楽しさを知ってもらい、体の基礎をつくることに重点を置いて練習することが今後の選手にとって遠いようで一番近道というわけです。
それでは具体的な練習方法をご紹介していきましょう。
しっぽ取り鬼ごっこ
通常の鬼ごっこでも良いのですが、ちょっとアレンジを加えた鬼ごっこです。
人数に合わせて鬼の人数(10人に対して2人くらい)を決めて、鬼以外の選手のズボンにビブスを半分くらい入れてしっぽをつくります。
逃げている間に自然にストップアンドゴーやフェイントを覚えていくことができ、アジリティの形成に役立ちます。
ボール投げキャッチ
サッカーボールを両手で真上に投げ、それを両手でキャッチする練習です。
ボールを真っすぐ投げるにはバランスが大事です。
そしてボールをキャッチするには、ボールの落下地点を正確に予測する必要があります。
また、どのくらいで落ちてくるのかを判断することも必要です。
ここでは空間認識能力を養う目的を意識しましょう。
空間認識能力はヘディングやトラップなど、今後の浮き球処理に非常に重要な能力です。
慣れてきたら、ボールが落ちてくる前に何回手をたたけるか?や、背中でキャッチしてみたりと負荷をかけることで更に効果が上がります。
いきなりノーバウンドリフティングは難しく、最初から難しいと思われてしまうと選手が嫌がってしまうので、最初はツーバウンドでもワンバウンドでも良いので、とにかく足のどこに当たれば、どんな強さで当てれば、ボールはどこに飛んでいくのかを体で知ることが目的です。
置いたボールを両足で小刻みに跳ねながらタッチします。
慣れてきたら前後左右に行きたい方向へ行けるようにしましょう。
リズム感とボールを足から離さないことを意識させましょう。
更にできるようになってきたら、タッチしながら両手を前後ろで交互に叩きながらやってみましょう。
コーン4つでグリッドをつくり、中央にボール10~20個を置きます。
4チーム(各4~5人)が4つのコーンに分かれ、合図と同時に中央のボールを各陣地にドリブルで1つずつ運んでいきます。
運んだボールはきちんとコーンの場所に足で止めます。
中央のボールが無くなった場合は他の陣地に奪いにいく。
禁止事項:ドリブルではなく蹴ること、2ついっぺんにドリブルすること、コーンにあるボールを守ること
この練習はサッカーの基本である「止める・運ぶ・蹴る」の「止める・運ぶ」を選手に意識させることが必要です。
サッカーの基本は1対1です。
プレゴールデンエイジ・ゴールデンエイジの選手も1対1は大好きです。
ここでは負けん気を出し、ボールに向かうことを選手に求めます。
ジュニア年代のクラブチーム対少年団チームの試合を見る機会が度々ありますが、クラブチームと少年団チームの差は、個のレベルの違いであることがよくあります。
体格や運動神経はそれほど変わりないのに、個のレベルが違う理由はそれに至る練習過程に差があるということです。
個が育たなければ、戦術・フォーメーションが同じでも勝てるわけがありません。
それはまるで日本代表チームと世界の強豪国チームとの試合を見ているような錯覚さえ覚えます。
個を鍛えるためにも、今後のための土台作りである低学年時期の練習は非常に重要であり、それを任されている指導者は重要な立場にあることを改めて認識する必要があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
執筆者
大平正実
1973年生まれ
東京都葛飾区出身
JFA 4級審判員
現在、主に葛飾区で活動するサッカー少年団でコーチとしてジュニア育成に携わっています。
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